何を贈ったらいいのか相談したくてここに来たことなどすっかり忘れてしまっていた
「失礼します」
食事は終わり宗主はとっくに席を外していたが、縁側からネジは控えめにそう言って、
「遅くなりました、お返しします」とヒナタに風呂敷包みを渡した。
「いつでもよかったのに、わざわざごめんなさい」
「ついでですから。」
「ネジ兄ちゃん~、ソレってヒナタ姉ちゃんの顔見るついでってことか~コレ?(ニヤニヤ)」
ハナビが殺気立ちヒナタが気まずそうにへらっと笑う下世話なツッコミにネジは動じず
「今日は何か…?」と事務的に問う。
「ハナビの誕生日なの」
「ハナビの誕生日…?」
「そう。ハナビは今日、13才になったのよネジ兄さん」
「13さい…」
ネジらしからぬリアクションにふとハナビがネジを見ればガチリと目が合い、
意識的にそっぽを向けばどういうわけかフンと笑われる。
(「何がおかしいいーーー!!!」)
いちいちひっかかる態度に火か何か吐きたくなったが友人と姉の手前ぐぐっと堪え、言葉を呑み込んだ。
自然な動作でネジに席を勧めるヒナタに「いや、」と断りかけるネジに
「そこから入らないでください。ここは食卓あなたは不潔です」
とハナビは冷たく言った。
「ハナビちゃん…!」
「だって!ネジさんだってこないだハナビに部屋入るなって言った!!」
「ネジ兄さん…」
「巻物を広げてたからだろ…ハナビは足元にあるものはなんでも踏むから」
「そっ…そんなの私がちっさい時の話でしょ?!!!それに踏んだのはあなたが片付けなかったお盆ですー!!」
「もっと悪い」
「何で!!!」
「踏んでいいものと悪いものの区別もつかないのか?」
「あーそう!なら巻物は踏んでもいいってことですね!?」
「踏まれたら困るから入るなつったんだろーが!」
「あなたが巻物とお盆を引き合いに出して踏んで良いもの悪いものつったんでしょ?!?」
「誰が巻物と盆を引き合いに出した!!勝手に曲解して揚げ足を取るな!!」
「アゲアシなんか取ってないもーん!ネジさんの日本語が意味不明だし」
「お前のが意味不明だ」
「お前って言うなー!!」
「あ、あああのっ…」
「なーなーネジ兄ちゃん、プレゼント何にする?コレ。」
木の葉丸リサーチ中↑。同時に
「もらうかそんなもん!!」と言うハナビ、
「用意するかそんなもん」と言うネジ。
売り言葉買い言葉か先に詰まった方の負けか会話はキャッチボールというよりデスボール化していく。
(こんなネジ兄ちゃん見たことないぞコレ…)
半分呆れながらしかしもう半分は確実に面白がっていた。肩の猿も固唾を呑んでハナビとネジを見つめている。
「いーりーばーぜーんー!!!」ハナビの声は大きすぎて割れている。
「用意しないと言っている」
「あーよがっだ!!!あーうれじっげぼっげほ!!」
ラリーが途切れたところでネジは無表情のまま、それでは、とヒナタに目で会釈する。
「あっ・・・ま、待って!ね、ねえハナビちゃん、少しだけネジ兄さんにも食べてもらいましょう。
任務帰りは誰だって汚れてるのだし…今日は…このままお別れするのはよくないよ…だって今日は…」
あなたの誕生日なのに。
とは言わなかったが充分伝わっていた。
今のハナビなら、この事態を収拾する責任と能力があることを理解してくれるはずだと強く信じる眼差しを受けて、
そうそもそも私は
「13さい…」のイントネーションの
「それでオレは何をすれば?」と自問した様子がひどく気に障っただけで、
相手が彼でさえなければあんな噛み付くような言い方はしなかったという自覚はある。
もっと言えば誰に対してもそんな言い方をしてはいけないという常識も知ってる。
しかし一度してしまった以上、謝るなり手の平返すなり、
誰でもなく自分から和解に踏み出さねばならない道理も理解できる。
ただひとつ、相手がこの男でさえなければこれらのことはすべて腑に落ちるのだ。
静かになってしまったハナビを傷つけないように、がんばって場を和ませようとするヒナタ。
「ねえ、ネジ兄さん。ハナビちゃん今度初めて里外に行くのよ。ネジ兄さんが話してた砂と合同の探索任務、
あれに参加することになったんですって。日向からは三人入ってるけど、最年少って…すごいでしょう?」
ネジは目を泳がせながら(ハナビを見たらまた鼻で笑ってしまいそうなので)「ハア…そーですね」などと言っている。
「それでね、(担当の)先生は最初躊躇ってらしたけど、結局今度の中忍試験も受けさせてもらえることになったの」
自分のことのように誇らしげに言う。
いい加減に聞いてたネジは急にムキになって、
「それはいかん、早すぎる」
「あなたが言うか」
中忍試験と聞いてハナビもまたムキになった。
「誰が言うかは関係ない。担当上忍が一度でもまだ早いと判断したのならまだ早いということだ」
「いーえ今のは明らかにあなたの主観でした!何やら中忍試験にトクベツな思い入れがおありのようですが
私とあなたを一緒にしないで下さい!!」
「ごめんなさいごめんなさい!!私がいけなかったですもうやめてハナビちゃん…」
思いっきり頭にきたネジと今にも飛び掛りそうなハナビの間に入ってヒナタ半泣きである。
「な、なんで姉上が?てか何でハナビに?先に難癖つけたのはネジさんでしょ?!!そっちは特別扱いですか!!!」
「バカか(ため息)」
「バカって言うヤツがバカだバカ!!」
「ホラ見ろお前はオレの三倍バカだ」
「かっっ・・・・(何か投げられるものを物色中)か、カエレーーー!!!!」
ハナビの咆哮を後にネジはフスマを閉めた。
今のは怒るより泣いた方が効果的な攻撃だったと後悔するハナビ。
ネジから受け取った猿(←ハナビが投げた)を手に肩落とすヒナタ。
なんか…やっぱり…
そして木の葉丸は思った。
よく似た二人だコレ…。