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畳に埋め込んだネジに捨て台詞を吐いた後、ハナビは猿飛家へと走った。



「おっネジ兄ちゃん~おは…いってえええ!!!」
今回の件に木ノ葉丸がどこまで関わっているかも定かではなく、まずは事情聴取の目的で彼を訪ねたつもりだったが
自室で寝転がってゲームしてた木ノ葉丸が自分を疑いなくネジと呼び能天気にへらへらと笑いかけやがるのを見て、
殴りたいと思った時には殴っていた。
「私はネジさんじゃない」
「な、何だって?」
「いや忘れてくれていい。昨夜連れてた猿は何処だ」
説明するのも面倒になって、(信じてもらえなかった場合も想定して)色々省略し、用件のみを聞いた。
「それが昨夜から戻らなく…て、もしかして…は、ハナビか?コレ…」
「やはり何か知っていたか・・・」
ハナビは2発目を用意した。
「まっまてまてまて!!オイラ前にもネジ兄ちゃんに殴られたことあっけど今のは痛すぎだぞコレェ!!ちゃんと手加減しろって!!」
「何を馬鹿なこと…」
はっとハナビは思い当たった。
自分も何度かネジにゲンコツを食らったことがあるが父のそれよりずっと軽かったことを。
しかし、今日ハナビはもう二回もネジを撃沈した。それも渾身の力で殴ったわけじゃなく。
つまり、ネジが暴力的制裁に及ぶ時は仏心か大人の事情か何らかの手心を加えてた計算になる。
ええいしゃらくさい真似を…と少しプライドが傷ついたが、とりあえずネジにできることが自分にできないのは癪だ。
今度殴る時は幸せな夢を見ない程度に遠慮してやろうと胸に留めた。
「その前に暴力に訴えるのをやめてコレ…(涙目)」
「その前に何で私がこんな目にあってるのか説明してください。」
ハナビはごく普通に(そりゃちょっとはムカついてたが)聞いたつもりだったが、
木ノ葉丸の目には火の国が誇る天才上忍から倫理観が欠けた危険な生物が映っていた。



ハナビが木ノ葉丸を電気スタンドで照らして尋問している間、
ネジはヒナタの炊いたふっくらつやつやご飯と絶妙な塩梅の味噌汁と煮物(昨夜の残り物だろう具が豪勢だ)
生卵と漬物と焼いた鮭で腹を満たした後、
髪を梳いてもらったり膝の上で耳掃除をしてもらったり玄関の掃除を手伝ったらちやほやと褒められたり、
休みの日のクセで森へ鍛錬に出かけようとすると一人じゃ危ないからと言って一緒に付いて来てもらったりと
妹という特権を遺憾なく発揮中であった。

ちなみに猿は、ばったり会ったヒナタが分けてくれたおにぎりを頬張ったあと木陰でのんびり昼寝して、
宗主は書斎に篭もり、
コウは任務にでかけ、
トクマは惰眠を貪り、
ホヘトは生徒たちが作ったペットボトルロケットを丘まで飛ばしに行くという極めて平和な時間が流れた。



そして数時間後、昼下がりの商店街。
「あっネジ先生だ」
「ネジ先生~!」
後ろから呼びかけられる声をハナビは不自然と知りながら無視した。
ところが
「なんだ、今日は部屋でやることがあったんじゃなかったのか?」
子供達の後ろから、素通りし難い年上の男性ボイス。
振り向くと、何度か見たことがある分家のおじさんが子供を三人引率していた。
両目の下に刻まれた皺と頭の真上で結んだ髪が特徴的。名前は思い出せない。
「・・・・・・。」
一応ぺこりと(半身で)頭を下げると、深く沈んだ表情に気付いたのか
「どうした?何かあったのか?」
と目ざとく聞かれ、なるべくネジっぽく首を振る。
すこし怪訝な顔はされたが、この人大体普段から浮かれた表情はしてないだろ?と思ったとおり
立ち入った事情などは聞かれずにすんだ。
「ちょうどよかった。オレはまだ戻れないから、ここで渡しておこう」
と、ホヘトは懐から細長い風呂敷包みを出してハナビに渡す。
重さ大きさからよくある形のクナイと想像した。
「見た目は他のものと変わらないから、何か印をつけておくといい。値が張るからな。
だがちょっとやそっとじゃ錆びない。乾燥地で使うなら最適なものだ」
…乾燥地で?
「それから、昨夜探したら一つ出てきたから…本当はこういうものの方がよかったんだろう?」
ケースに入った、道具袋に収まるサイズの小さな消耗品セット。
「あーっそれ、オレにくれたヤツとおんなじ!」
「オレももらったな…誕生日に。」
「そうなんだ!私の誕生日にもくれるのかなあ?なんだかんだ言って、結局優しいもんねネジ先生は」
ワイワイ騒ぎ始める子供たちにホヘトが諭した。
「いやあ、見た目は同じだが中身は別の物だろうな。お前たちにはまだ兵糧丸は必要ないだろう」
「兵糧丸?誰か里外行くの?」
女の子にまっすぐ問いかけられ、里外(乾燥地)任務の心当たりがあるハナビはドギマギと言い繕う。
「いや、別に…」
そこで男の子が一人、生意気な口調で言った。
「里外に出ないから兵糧丸が必要ないと決め付けるとはな…
基本的な道具だからこそ、早くから使い慣れておけと言ってたくせに。」
「お前…兵糧丸欲しかったのか」
「うらやましいんならそう言えば良いのに」
残り二人にからかわれ、「うらやましくて言ってるんじゃない!!」と喚く、どこのクラスにも一人は居そうなつむじ曲がり。
「わーまたカンスケがヒネた!!」と囃し立てるやんちゃそうな男の子に
「孫一が茶化すとますますヒネるから…」とため息をつく、ませた感じの女の子。
「はは、まあ子供のうちは多少ヒネてた方が立派に育つのかもな?」
と指導者らしい言い方でカンスケ、孫一、女の子の順にぽんぽんと頭を撫ぜていくホヘト。
(子供の世話ってのも、案外大変なんだな…)
ネジが受け持ってる下忍だろうか?と推測しながらその光景を、ほんの少し微笑ましげに見つめるハナビに
「この人みたいに、な?」
ホヘトはネジの頭までポンと撫ぜた。
突然やるせなさに襲われる。
今すぐこの場を去りたい気持ちが湧いてくる。
そして女の子が追い討ちをかけた。
「でもネジ先生~ヒナタ先生にこんな色気のないプレゼントしちゃだめよ?ちゃんと女心をくすぐる一品を選ばなきゃ!」
あっはっはっは!と男子はおろかホヘトまで笑い、限界に達したハナビは逃げるようにその場を後にした。





「どーしてドイツもコイツも姉上のことでネジさんをからかうんだ?!!」
ハナビは木ノ葉丸の部屋に着くなり、買い物袋をドスンと置いて胡坐をかいた。
「それはヒナタ姉ちゃんとネジ兄ちゃんが結婚することになったからじゃないかコレ。」
木ノ葉丸はまるで自然の摂理であるかのように解説しながら買い物袋をあさり、
ステーキ弁当と豆腐サラダとプリンパフェを見つけて目を輝かせた。
「おわーー豪勢な昼飯だなコレエエ!!!」
と言ってからはたとスポンサーがハナビでない事に気づいて、こんな人でなし見たことないという目でハナビを見たが
ハナビが所持金の90%をレジ脇の戦災孤児募金の箱に入れてきたと知ったら聖者の皮を被った鬼を見る目をしただろう。
「ハナビ知ってるか…結婚前って色々モノイリってヤツらしいぞコレ…」
それを綺麗に無視して何かにこだわり続けるハナビ。
「でも、こないだ何トカって人と何トカって人が結婚した時はぜったいこんなんじゃなかった…」
「あの二人は結婚今更?ってカンジだったもんなコレ」
「…それを言うなら、ネジさんと姉上の、・・・は、からかえるような事じゃないはずです」
『結婚』という単語を言えないハナビに、決定からもう2ヶ月経とうとしてるのに信じられないとため息混じりに
「なあハナビ、誰かがお前に言わなきゃいけないと思うからオイラが言うぞ。
もういい加減あきらめて皆と同じように祝福したらいいんだコレ。」
「祝・・・ふく?」
「ああ、みんな祝福してるんだ。めでたい事だろ?ネジ兄ちゃんにあんないいお嫁さんが…」
ハナビはガバッっと両手で耳をふさいだ。
「お前は父親かコレ」
耳ふさいでるのに何で聞こえちゃうんだ上忍の耳ってヤツか?!
ハナビは木ノ葉丸の唇を読んでる自分に気付かずネジの体を恨んだ。そして全霊を込めて否定する。
ちがう、私は父やじーさまみたく姉上がお嫁に行くのが辛いんじゃない、
「姉上が好きでもない人と結婚しなきゃいけないのが辛いんだ!」
しかも、あんな、あんな最低な男と…

___「なんだかんだ言って、結局優しいもんねネジ先生は」
___「まあ子供のうちは多少ヒネてた方が立派に育つのかもな?」

ハナビはなんとかしてネジの最低たる理由を挙げたかったが、ついさっき彼を見直すきっかけになった言葉しか出てこない。
これじゃだめだ。
彼は最低で最悪な人物であって、結局優しかったり立派だったりしては困るのだ。
かつて永遠に奪われかけた姉をいつの間にか別の形で奪い去られてしまう滅茶苦茶を滅茶苦茶と呼べなくなる。

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